INTRODUCTIONCourse Highlightsコースハイライト
特徴あるコースの中から
特に印象深いホールをご紹介します。
『意味のないホールは
1つとしてない。』
国道と仁川で分断される敷地をいかに魅力的なフィールドに変貌させるか。
井上誠一が全身全霊で取り組み、熟考の上に編み出したのは完璧としか言いようのないルーティングだった。
穏やかなスタートホールからクライマックスの18番まで、井上イズムが凝縮した唯一無二のホールが続く。
OUT COURSE
甲山の裾野に横たわる
フロントナインは
比較的穏やかだが、
ハザード越えに挑む場面が多く、
スリリング。
印象的なホールを挙げるとまずは名物ホールというべき3番。
短いパー3で「箱庭のような」と表現されているようだが、
むしろありのままの自然を感じる厳しいホールだ。
水草が美しく彩る川がグリーンをガードし、
右の斜面方向にマネジメントしても、
グリーンのマウンドが効いていて簡単には寄せワンさせてもらえない。
5番は中央を斜めに仁川が横切るパー4。
右サイドに打てば距離が稼げるが、
ひっかけると川に飲み込まれる危険が隣り合わせ。
ぶ厚い六甲山系を従え、要塞のように聳えるグリーンに
打ち上げるセカンドショットもスリリングで非常にメモラブル。
7番は右ドッグレッグで、スケールの大きなパー5。
仁川越えのティーショットを放った後は
ブラインドエリアに向かって大胆に球を運んでいく必要も。
甲山を借景に佇むグリーンは両サイドに角が生えているように見え、
雄々しさを感じる。
IN COURSE
高低差のあるバックナインは
スロープを生かしてドラマを演出。
借景と共に記憶に刻まれるホールが続く。
モミの木を目標に打ち上げていく
12番ティーショットは仁川越えとなりプレッシャーがかかる。
木の場所にはかつて寒天を造っていた小屋があり、
今日では川に架かる橋に其の名を残している。
豪快に打ち下ろしていくパー4の13番は
セカンド地点でグリーンの形状にはっとさせられる。
最初は左サイドの美しいラインが目に飛び込むが、
視野を広げると借景のリアルな甲山とグリーンがシンクロし、
其れ自体が甲山を象っていることに気付く。
このダブル甲山の仕掛けに思わず微笑んでしまう。
15番は空間の広がりを見事に表現しているパー3。
左サイドをバンカー群でタイトに締めつつ、
右サイドは斜めのラインを幾層にも使って広く見せている。
これにより右サイドは安全と錯覚するがそうではない。
奥行きがないから思わぬトラブルに見舞われることもあるだろう。
16番は最も難しいホールの1つ。
仁川の手前に刻んでからのセカンドショットは距離が長く、
下り傾斜がハザードとなって
思うように打たせてもらえないからだ。
グリーン付近は狭いので無理に狙っていくと
両サイドのOBにつかまる。
手前に置いて寄せワンのマネジメントを徹底すべきタフなホール。
最終18番は左ドッグレッグのパー5。
ティーイングエリアは最も高い場所にあるものの、
左サイドの林が成長しブラインドのティーショットとなる。
ランディングゾーンは広いが、まったく見通せないので
かなりスリリングであることは間違いない。
この最後の関門をクリアすればイーグル、バーディを
狙っていけるゲーム性の高い最終ホール。
コース設計には物語性が大事と言われるが、
井上誠一の西宮カントリー倶楽部はそれを体現するかのような18ホールだ。
物語の始まりを予感させるフロントナインからドラマチックなバックナインへの場面転換は見事の一言。
冒険活劇の主人公さながらのプレーが楽しめる。
文:ゴルフライター 小林一人